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脚本・編集　そんちゃん

ヒカル：（水上都市ミノキア。コーラルから南東に位置する街。
　　　　　イーリス鉱山が開通し、この美しい街にやって来てから何週間かが過ぎた。）

　　　　アシャフ…バルケス……

　　　　（情報収集をしながらもわたしは二人の事を考えていた。
　　　　　自分のした事が最善だったのかどうかは今でもわからない。）

　　『バルケス：俺たちは裏切られ利用され続けていたのだ…。』

ヒカル：（バルケスの最後の言葉が耳に残って離れない。
　　　　　狂気に犯されていたとはいえ、
　　　　　誤解されたまま逝ってしまったバルケスを思うとやり切れない。

　　　　　エデンが心配そうに擦り寄ってきた。）

　　　　ごめんね、エデン。
　　　　いつまでもこのままじゃダメだよね。

　　　　アシャフだって自分の決めたことをやり遂げろって言ってたし！
　　　　こんなにうじうじしてたら怒られちゃう。
　　　　前に進まなくちゃね。

　　　　（わたしは立ち上がり、トルファジアの情報を集めた。

　　　　　トルファジアは３頭の竜が守護していた。
　　　　　そして、そのうちの１頭である赤い竜がここから北にあるヴェネツィアス火山に
　　　　　今でもいるらしい。）

　　　　守護竜か…
　　　　なにか知っているかもしれないわね。

　　　　（左耳で静かに揺れるアシャフの耳飾をそっと撫でてから歩き始めた。）

　　　　　
　　　　　　　


ヒカル：（火山の事を詳しく調べていると、
　　　　　火山に入るにはアルカスという一座の許可がいるという事がわかった。

　　　　　さっそくわたしはミノキアから少し北にあるアルカス一座のアジトへと向かった。）

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■アルカスの屋敷

ヒカル：（アジトは普通の大きな屋敷みたいだった。
　　　　　そこには親に捨てられた子供がたくさんいた。
　　　　　子供達はみんなアルカディア帝国の子孫だった。
　　　　　ミノキアで暮らそうにも、人々から奇異の目で見られ、
　　　　　いたたまれず街から離れた場所へやってきたのだという。）

　　　　アルカディア帝国なんてもう大昔のことなのにまだこんな差別があるなんて…

　　　　　（少ししてチャイナ服に身を包んだ座長のアルカスさんが現れた。）

アルカス：火山に入りたいのはアナタアルか？

ヒカル：あ、はい。

アルカス：OK、OK、ワタシ火山に入れる道知ってマス！
　　　　　　特別に1000万Gで教えてあげるネ！

ヒカル：い…1000万！？
　　　　そんなお金あるわけが…

アルカス：アイヤー！お金ないデスカ！
　　　　　　じゃあ、ワタシたちのお願い聞いてくれるなら教えてあげてもイイネ！

ヒカル：…お願いってなんですか？

アルカス：実はワタシたちの案内した男が、火山にしか生えない薬草欲しさに、
　　　　　　火山の聖域に入って竜を怒らせてしまったアルヨ。
　　　　　　竜が怒って火山噴火シマシタ！ワタシたち商売あがったりで困ってるアルね。

　　　　　　火山に住みついてる竜は、大昔、
　　　　　　トルファジアって国に味方してエルヴァニア人と戦った悪い竜なのデース！

　　　　　　そんな悪い竜を放っておくわけには参りまセン。
　　　　　　ワタシ、平和大好きネ！だから冒険者サンに竜退治お願いしたいアル。

ヒカル：竜…退治…？

アルカス：引き受けてくれるなら特別に火山案内料の1000万Gはおまけしてアゲルね！
　　　　　　さらに竜を退治してくれると、古代のお宝をもれなくプレゼント、ワーーーォ！

ヒカル：は、はぁ…

アルカス：ここから北、ワタシたち、火山に向けて抜け道作ってアルね！
　　　　　　そこ通るヨロシ！

ヒカル：（アルカスさんは押し付けるように指輪を渡してきた。）

アルカス：これ仲間の証、生贄の指輪アル！

ヒカル：い、生贄…？
　　　　あ、その案内したっていう人は？

アルカス：確かセメレーと言ったヨ。けど噴火の時ワカレワカレになったネ。
　　　　　　もう死んデルネ。あ、アイヤアイヤー、きっと死んでマース。

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■ヴェネティアス火山入り口

ヒカル：ここが入り口ね。
　　　　トルファジアの竜ってどんな竜なんだろう。

　　　　アルカスさんは悪い竜って言ってたけど、本当かなぁ。
　　　　なんか怪しいよね。

　　　　まぁ、どっちにしろ竜には会わないといけないよね。

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■ヴェネツィアス火山

ヒカル：あつ…
　　　　（中はものすごい熱気で、下の方にはマグマが渦巻いていた。）

　　　　さすが活火山…
　　　　砂漠とは比べ物にならない暑さね。

　　　　エデンは暑さも寒さも平気だもんね。
　　　　いいなぁ…

　　　　（ホルスは、たまに魔法で氷を出して涼もうとしていたけど、すぐに溶けてしまうので諦めたようだ。
　　　　　暑さに体力を奪われながらもなんとか進む。）



　　　　うぅ…
　　　　もう限界！
　　　　ちょっと休憩〜。

　　　　（山頂まで来た所でその場にへたり込む。）

　　　　今までの竜はみんな良い子達だったわ。
　　　　いくら国が違うからと言ってもそんな悪い竜がいるとは思えないのよね。

　　　　（エデンが頷く。）

　　　　でしょ！？
　　　　エデンだってこーんなに良い子なのに！

　　　　絶対あのアルカスって人怪しいもん。
　　　　ねー、エデン。

　　　　（不意に伸ばした手に何かが当たった。）

　　　　ん？草…？
　　　　ここだけ草が…
　　　　こんな所にも生えてるなんてすごい生命力ね。

　　　　（何気なくそのひとつを摘み取った。そしてふと見ると火口の端に何かが見える。）

　　　　ん？あれなんだろ？
　　　　布？…服の切れ端？
　　　　もうちょっとで…とどきそ…

＜ガラガラ＞

　　　　きゃ…きゃあああぁぁぁあぁ！！

　　　　（エデンが落ちていくわたしを必死で捕まえようとしたけど間に合わなかった。）

＜ドサッ＞

ヒカル：いったぁぁぁ…
　　　　腰思いっきりぶつけっちゃったよ…

　　　　うわぁ…
　　　　ちょっとずれてたらマグマに落ちてたじゃないの…

　　　　（ちょうど火口の下の小さな島のような所に落ちたらしい。
　　　　　見上げるとさっきまでいた所までは少し高さがある。）

　　　　うーん。登るのは無理そうね…

　　　　（ホルスがゆっくりと降りてきてわたしの後ろの方を指す。）

　　　　ん？あ、階段がある。下りるしかないか…


　　　　（かなり下りたと思う。
　　　　　多分、火口まで上ったよりも時間が経っているから、もうかなり地下の方まで来ているはずだ。）

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■火山最下層

ヒカル：ここは…

　　　　（やがて神殿にたどり着いた。）

　　　　火山の底にこんな所が…

　　　　（奥に進むと赤い大きな竜と男の人がいた。
　　　　　竜はどんよりと濁った目をしている。…とても苦しそうだ。）

セメレー：あいたたた、あいつら、まったく何てことしやがるんだ。
　　　　　　すまないが手を貸してもらえるかい？

ヒカル：あ、はい。
　　　　（男の人は足に怪我をしているようだ。）

セメレー：私は薬剤師セメレーと言うんだ。
　　　　　　事情があって火山の主であるノーリに会うために、危険を承知で火山に登ったんだ。
　　　　　　アルカス一座というものたちに案内を頼んだら、火口に突き落とされてしまったんだ。

ヒカル：えぇ！？

セメレー：あいつらはアルカディア帝国の子孫でありながら、
　　　　　　騙した人間の姿に化けて、ノーリから何度も鱗を騙しとってたんだ。
　　　　　　鱗は高値で売れるらしいからね。

ヒカル：なんてことを…

セメレー：ところが俺は生き延びて、ノーリに助けられた。
　　　　　　そのときに俺に化けたアルカスがやってきて、ノーリは今まで騙されていたことに気が付いた。
　　　　　　騙されていたと知ったノーリはアルカスに襲いかかったんだが、毒の呪いを受けてしまったんだ。

ヒカル：ひどい…

セメレー：このままではノーリは死んでしまうかもしれない。
　　　　　　何とかノーリの毒を消してやりたい。

ヒカル：（もう一度ノーリを見る。とても危害を加える悪い竜には見えない。）
　　　　わかりました。どうすればいいですか？

セメレー：毒を消すには火山の頂上に生えている百年草がいるんだ…

ヒカル：火山の頂上？もしかしてこれですか？
　　　　（火口に落ちる直前になんとなく摘んだ草を見せる。）

セメレー：ああ！そうだよ、これだ。
　
　　　　　　あとは…私の家に代々伝わる古代のすりばちで調合しなければならない。
　　　　　　だが荷物はアルカスたちに奪われてしまったんだ。

ヒカル：なるほど、わたしが取り返してきます！

　　　　（わたしは大急ぎでアルカスの屋敷に戻った。）

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■アルカスの屋敷

アルカス：薬剤師セメレーが生きてたアル？
　　　　　　竜の毒を治したいから道具を取り返すように頼まれたアルか！

ヒカル：そうよ。早く返しなさい！
　　　　困ってる人を騙すなんて最低よ！

アルカス：ノンノン、ワタシもてないネ！
　　　　　　道具はたぶん座長の部屋にあるアル！本当アル！
　　　　　　座長の部屋には案内できないアル。勝手に入ったら怒られるネ。

ヒカル：何を言っているの？あなたが座長なんでしょ！

アルカス：ワタシ座長じゃないのヨネ。影武者アル！
　　　　　　座長には大事なお客さんが来てるから、
　　　　　　ワタシがかわりに仕事をお願いしたのデス！
　　　　　　文句は座長に言うヨロシ！！！

ヒカル：か、影武者…？

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ヒカル：ぜーったい本物のアルカスを見つけ出してみせるわ！

　　　　（気合いを入れて階段を進んだものの、目の前に広がる巨大な迷路に気が遠くなる。）

　　　　家の中にこんな物作るなんてどんな神経してるのよ…
　　　　おまけに魔物までいるなんて…！

　　　　（魔物を倒しながら、何度も迷いつつ進むとやっとのことで座長の部屋についた。）

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■アルカスの屋敷2階

ヒカル：（お客が来ているというのは本当だったようで、部屋には銀髪のエルフがいた。
　　　　　少し奥には偽者とそっくりな本物のアルカスがいる。）

ハウル：かわった格好をしているな。ほう、ファーレンからやってきた冒険者か。
　　　　　私はハウル。機会があれば一度手合わせ願いたいものだ。

ヒカル：力試しとかには興味がないので…

ハウル：無用な戦いはせぬか。賢明だ。
　　　　　アルカスに用があったのだろう。先に済ましてくるがいい。

ヒカル：（ハウルに会釈をしてアルカスに近づく。）

　　　　あなたが本物のアルカスね！
　　　　セメレーさんの荷物を返しなさい！

アルカス：…あの薬剤師、生きてやがったか。
　　　　　　アルカディア帝国の子孫なんて、世界中のどこへ行ったってロクなことはないんだ。
　　　　　　ノスフェラトスにいったところで、死の大地に一歩入ったら瘴気で死んじまうんだ。

　　　　　　どうせ死ぬんだから、荷物なんか持っていっても無駄だろ。
　　　　　　あたしたちが有効に使ってやろうってのさ。

ヒカル：…力づくで取り返すしかないみたいね。

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■戦闘開始

アルカス：さあ、あんたの荷物もよこしな！！！

ヒカル：誰が渡すもんですか！

　　　　（連続で襲ってくる魔法を掻い潜りながら、エデンが間合いを詰める。）

アルカス：レディの部屋にいきなり入ってくるなんて、殺されても文句は言えないよ！

ヒカル：なにがレディよ…
　　　　人のものを盗むのがレディだって言うの！？

　　　　（エデンの一撃がアルカスに当たり、怯んだ隙にわたしとホルスが追い討ちをかけた。）

アルカス：あたしが負けるなんて…そんなバカな。

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■戦闘終了後

ヒカル：さあ、どうするの？

アルカス：わかったよ、荷物は返す。荷物といっても、たいしたものは何もなかったけどね。

ヒカル：（黙ってセメレーさんの荷物を受け取り部屋を出ようとした。）

アルカス：あたしを悪人だと思ってるだろ？その通り、盗みも殺しも何でもやる悪党さ。
　　　　　　…けどね、こうでもしなけりゃ生きていくことはできないんだ。
　　　　　　わかってくれとは言わない、けど、悪党だって必死で生きてんのさ。

ヒカル：…。

　　　　（リーユンたちのした事で、アルカディアの子孫は長い時が経った今でも苦しんでいる。
　　　　　だけど、きっとリヴェリウスをほうっておいたら…
　　　　　わからない、何が正しいのか…）

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■火山最下層

ヒカル：（わたしは再び火山の最下層にある神殿に戻った。）

　　　　セメレーさん、荷物を取り返して来ました。

セメレー：おお！大変だったろう、有難う！
　　　　　　これでノーリの呪いを解いてやることができる。

ヒカル：（そう言ってセメレーさんはさっそく薬の調合を始めた。）

セメレー：さあできたぞ、この薬を飲ませてやってくれ。

　　　　　　アルカスからもらった指輪は捨てたほうがいい。
　　　　　　生贄だなんて、とんでもない！

ヒカル：そうですね。
　　　　（生贄の指輪を捨て、薬を受け取る。）

セメレー：さあ、その薬をノーリに飲ませてやってくれ。

ヒカル：（ノーリへ近づき、薬を飲ませる。

　　　　　しばらくするとさっきまでの苦しそうな表情が少し和らぎ、懐かしそうな目でわたしを見つめた。
　　　　　そしてノーリは赤く光る小さな鱗をわたしの前に落した。）

　　　　これをわたしに？…ありがとう、ノーリ。

セメレー：良かった。これでノーリはもう大丈夫だ。

　　　　　　君とはまたいずれ…死の大地の先で会うかもしれない。
　　　　　　北へ行きたいなら、ノーリの鱗をなくさないようにね。
　　　　　　それを持っていないとアディーンは君を敵と見なすだろう…。

ヒカル：アディーン？

セメレー：私は岬の神殿に行かなくてはいけないんだ。

　　　　　　君がノーリを助けてくれたおかげで、生き残れる帝国の子孫が増えたかもしれない。
　　　　　　本当かどうかは知らないが、ノスフェラトスに行くことができれば、異世界へ逃げることもできる。

ヒカル：異世界へ！？

セメレー：それがアルカディア帝国の子孫にとって、最後の希望なんだ。

　　　　　　ノーリが元気になったら私も山を降りるよ。
　　　　　　また会おう！

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ヒカル：異世界へ…元の世界へ帰れる…？
　　　　やっと…やっと見つけた…！

　　　　（この世界に来てもうどれだけ時が経ったのだろう。
　　　　　探しても探しても見つからなかった答えにやっと近づくことが出来た。）

〜編集後記〜

この火山へはレベル上げに良く通いました。
正直、自爆はするし、魔法も痛いし、硬いしでしんどい場所でしたけど当時はここくらいしか稼ぐ場所がなかったんですよね。

クロゲ住人でこのクエストを知っている人は気づいたと思いますが、ハウルとの戦闘は避けました。
登場人物をこれ以上増やしたくなかったもので（;´▽｀A``

ヒカルはやっともとの世界へ帰る方法の確かな手がかりを見つけました。
さてさて無事に帰ることが出来るのでしょうか。