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脚本・編集 そんちゃん

  CAST
ヒカル(開くもの) cv.そんちゃん
勇者リーユン cv.ハロ
サザンカ cv.Shin
失翼のドゥヴァ
盲目のアディーン

沈黙のノーリ
cv.春一番
cv.ジュニ
cv.そんちゃん
リヴェリウス cv.プリン侯爵
皇女セクメト cv.ウズ
歌姫セレン cv.パフェ
A
B
cv.弧鈴
cv.かっつん
亡者A
亡者B
亡者C
亡者D
cv.まめ鋼
cv.キヨ
cv.絹の魔法使い
cv.???



■レクタール

ヒカル:(わたしは再びレクタールの冥府の道に戻った。
     盲目のアディーンの話では、失翼のドゥヴァは死の大地ノスフェラトスにいるらしい。

     そして、冥府の道でサザンカが言っていた言葉…。)

 
『サザンカ:私がここにいる限り、ノスフェラトスには行けぬ』

    (冥府の道にはノスフェラトスへと続く道があるはずだ。
     きっと、サザンカを倒さないとノスフェラトスへは行けない…)

    アシャフ、バルケス…そしてサザンカ…
    これじゃ本当に裏切り者だね…

    だけど…だからこそ、わたしは進まなくちゃ。
    全てを無駄にしないために。

■冥府の道


サザンカ:…ようやく時が満ちた。
      ノスフェラトスを目指す、愚か者たちがやってくるのだ。


ヒカル:サザンカ…
    (前と同じ場所でサザンカは待っていた。
     …そしてゆっくりと振り返る。)

サザンカ:待っていたぞ、ヒカル。
      お前は何故か4000年前と少しも姿が変わらぬな。
      それもアルカディア帝国の魔法科学のおかげなのか?


ヒカル:…。

サザンカ:まあ良い。
      おかげでアシャフの仇をこの手で討つことができるのだからな!

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■戦闘開始


ヒカル:(サザンカは鎌を振り上げて襲ってくる。)
    サザンカ…
    あなたをその呪縛から解放してあげる!

サザンカ:今宵こそは貴様の臓物をアルゼ神に捧げようぞ…

ヒカル:(またリジェを唱えようとするサザンカに矢を放つ。
     そこへエデンとホルスの連続攻撃が畳み掛けた。)

サザンカ:私はまた敗れるのか…何故だ…神の使徒となっても、貴様に勝てぬとは…

ヒカル:さようなら…サザンカ…

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■ノスフェラトス


ヒカル:(サザンカが消えた場所の奥に進むと、言いようのない酷い匂いと重い空気が充満していた。)

    ぅ…

    (そこはまさに死の大地と呼ぶのに相応しい場所だった。
     空も、大地も全てがどんよりと暗く、100m先さえも見ることができない。
     呼吸をするだけで吐き気を覚えるほどで、肌もちりちりと痛む。

     薄暗い世界の中でアディーンの鱗だけが青く輝いていた。
     アディーンが守ってくれている…そう思えた。
     きっと普通なら、この瘴気の中で1分と持たなかっただろう。

     でも、いくらアディーンの加護があったとしてもこんな所に長居は出来ない。
     心までどんどん侵食されて行く気がしてわたしはなるべく足を速めた。)

    こっちだわ…

    (先は見えないけど、なんとなく進むべき方向がわかる。
     沼地に足を取られながら進むと、やがて目の前に漆黒の宮殿が現れた。)

    ここが…黒の宮殿?

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■黒の宮殿 エントランス


ヒカル:(宮殿の中に入ると外のむっとする空気が無くなった。
     でも、外よりはマシというだけで、肌を刺す冷たい空気と腐敗臭は消えていない。)

A:津波が来るらしいぞ!高いところへ逃げるんだ!!

ヒカル:なに…?

B:火が、火が迫ってくる!どっちに逃げたらいいんだ。

ヒカル:頭の中に声が…
    (逃げ惑う人々の声、そしてうっすらと見える人影が宮殿の中を走りまわっている。)

    …これは…この場所に残った記憶?

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■黒の宮殿


ヒカル:(宮殿の奥は墓地になっていて、亡者が溢れかえっていた。
     亡者たちはわたしに語りかけては消えていく…)

亡者A:ふん、何をしたって無駄さ。
     お前もすぐに我々と同じ亡者になるんだぞ!?

    考えてもみろ。異世界に行くことのできる穴があったって、
    よほどの運がなければ死んじまう。
    家族や恋人が目の前でバラバラになって発狂した奴もたくさんいるんだ。

    そのたびに、ドゥヴァの嘆きが黒の宮殿に響き渡って、うるさいったらありゃしないよ。


亡者B:永遠に地上を彷徨う亡霊となってしまった私たちを哀れだと思いますか?
    神の奴隷となって生きる者のほうが哀れだと思います。
    救われなくても構いません。

    いま、あなたがここにいる。
    そのことが私たちの希望の光なのです。


亡者C:黒の宮殿の玉座には、
    『神の鉄槌』が起こった日に作動した帝国の秘法がそのままになっているらしい。
    もっとも、私はここから動くことができない身ゆえ、真実かどうかはわからぬ。

    その秘法を目指して、アルカディア帝国の子孫がやってきた。
    秘法を使えば異世界へ逃れられると信じて。
    だが…私は何度もドゥヴァの嘆きを聞いている。
    生きて異世界へ行くことのできた者など、いるのだろうか?


亡者D:玉座にある帝国の秘法…あれは確かに異世界へと繋がっている穴なんだ。
    だが………私の子は私の目の前で、穴に触れた瞬間にバラバラになってしまった。

    私はこの手で我が子を殺してしまったのだ!
    叫び声が…今も耳から離れない…。


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■黒の宮殿


ヒカル:(黒の宮殿の奥には女性が一人立っていた。)

セレン:ようこそ、滅びた国トルファジアへ。私は歌姫セレン。

ヒカル:やっぱりここが…トルファジアなのね。

セレン:ドゥヴァはあなたが帰って来る日を、ずっと待っていました。
    すぐに会ってあげてください。
    そしてどうか、ドゥヴァの望みを叶えてあげてください。


ヒカル:望み?  ぅ…
    (一瞬意識が遠のく。)

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■竜の砂時計


ヒカル:(目を開けると、とても大きな砂時計が3つ。
     それぞれ赤い砂、青い砂、そして緑の砂がさらさらと流れている。)



    ここは…

ドゥヴァ:よく来た、アルカディアの血に連なる者よ。

ヒカル:(振り返ると緑色の大きな竜がいた。しかしその翼は黒く変色し、ぼろぼろだった。)

    失翼のドゥヴァ…

ドゥヴァ:そう、私は最後の竜ドゥヴァ。
     お前が帰って来る日を、ずっと待っていた。
     気が遠くなるほど何度も繰り返す世界の始まりと終わりの中で、
     時間の牢獄から逃れることのできたお前は、私たちの希望であるのだ。


ヒカル:(お母さんがわたしを異世界に逃がしてくれた事で、螺旋世界の干渉から逃れられたのね…)

ドゥヴァ:なぜ、世界は歴史を繰り返すだけなのか。
     …全てを語ろう。

     そこにある三つの砂時計は、
     アルカディア帝国の全盛期にラウレンスが作り出したものだ。
     リヴェリウス神の知識を得て、時を操り、空間を越える術をも得た。
     不滅の肉体を創り出すことはできなかったが、魂を肉体に戻す術は完成した。

     時を操る砂時計、空間と空間を繋ぐ魔方陣、魂を肉体に戻す反魂の珠、
     帝国を守っていた結界装置…
     帝国の魔導装置はいずれ劣らぬ素晴らしいものだった。
     だがそれは、女帝アルカディアほどの魔力を持った者でなければ、
     扱いきれぬ危険な道具でもあったのだ。


ヒカル:選ばれた者だけが使える魔導装置…

ドゥヴァ:アルカディアが暗殺され、帝国を守っていた結界は弱まり、
     勇者リーユンたちはお前の協力で結界を破った。
     トルファジアがエルヴァニアとの決戦に敗れた時、女王は魔方陣を使って異世界に逃れようとした。

     だが、女王の力が足りず魔方陣は暴走し、裂けた空間から
     すさまじいエネルギーが溢れ、クルクスに災いをもたらした。
     放っておけば、空間はどんどん広がって行き、世界を飲み込んだだろう。


ヒカル:世界を…

ドゥヴァ:そこで我ら三頭の竜は時間を操る砂時計を使い、魔方陣の周囲の時間をとめた。
     砂が一粒落ちるたび、時計は砂の記憶を再現する。
     そして時計は、繰り返す時間に絶望した人々の魂を砂に帰す。


ヒカル:魂?この砂のひとつひとつが人の魂なの…?

ドゥヴァ:砂の記憶は、延々と繰り返される。
     私たちは、世界を時の牢獄に閉じ込めてしまった…。
     この世界には、過去はあっても未来はなくなってしまったのだ。


ヒカル:この砂時計が…

ドゥヴァ:希望の子よ。
     異世界へ逃れたことで、お前は時間に囚われてはいない。
     召喚士ゲイツは、お前を異世界から呼び戻したが、お前は、今とは異なる時間に現れている。
     リーユンとともにアルカディア帝国と戦っていたのも、間違いなくお前であるのだ。


ヒカル:はい。

ドゥヴァ:お前はこの世界で何度も生まれ、異世界へ逃れ、この世界に帰ってきている。
     そしてようやく会うことができた。
     我らを…世界を時間の牢獄から解放してくれ。


ヒカル:解放?

ドゥヴァ:我ら三頭の竜を倒し、砂時計を破壊して欲しいのだ。

ヒカル:倒す…?あなたたちを殺せと言うの?

ドゥヴァ:時間を解放して、世界をあるべき姿に戻して欲しい。

     空間を操る魔方陣も、お前ならきっと制御することができるだろう。


ヒカル:そんな…

ドゥヴァ:頼んだ…我らはもう、疲れてしまったのだ。

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■黒の宮殿


ヒカル:(気付くとさっきのセレンの元へ戻っていた。)

セレン:ありがとう、私たちを救ってくれるんですね。
    まずはノーリのもとに向かってあげて下さい。


ヒカル:…。

セレン:お気をつけて…。

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■火山


ヒカル:(また意識が一瞬飛び、目を開けると火山の中の神殿に立っていた。
     そして目の前には沈黙のノーリ。)

     ノーリ…

     (ノーリの光り輝く瞳の色は紺碧へと遷り変わり、その口元には真紅の炎が見え隠れしている。)

     全てを理解しているの…?

     (ノーリは静かに頷き、襲い掛かってきた。)

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■戦闘開始


ヒカル:あなた達を殺さなくても、砂時計を破壊するだけではだめなの?

    (わたしの悲痛な問いかけに、言葉を持たないノーリは決意に満ちた瞳で答える。)

    ノーリ!!

    (ノーリはその命を燃やし尽くすかのように攻撃の手を緩めない。)

    …わかったわ。
    その強い想いに答えます!

    エデン!ホルス!!

    (力を合わせ、ノーリに立ち向かう。
     ノーリはさらに激しく攻撃してくる。
     やがてノーリの体に無数の傷が刻まれていった。)

    これで…最後!

    (渾身の力で矢を放つ。
     矢は一直線にノーリの胸に突き刺さった。)


ノーリ:(アディーン…ドゥヴァ…聞こえるか……もうすぐだ…)

ヒカル:ノーリ…

    (静かに倒れたノーリの顔はとても安らかだった。
     気の遠くなる程の長い時間の中で、この時をひたすら待っていたのだろう。)

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ヒカル:(神殿の奥へ進むと赤い砂時計があった。)

    ノーリの…砂時計…

    (ノーリの力を失った砂時計のガラスには大きなヒビが入っている。
     わたしは渾身の力を込めて砂時計を破壊した。)

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■黒の宮殿


ヒカル:(砕け散る砂時計を見届けると、再び黒の宮殿にいるセレンの元に戻った。)

セレン:声なきノーリの声が、私にも聞こえました。
    時計の一つが壊れたことで、時の流れがかわろうとしています。

    それに気がついた者もいるようですが…
    急いでアディーンのもとへ向かってください。


ヒカル:…はい。

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■海の神殿


ヒカル:(目を開けると海の上に建つ小さな神殿の前にいた。
     そして中では盲目のアディーンが待っていた。)

アディーン:時が来たようですね。

ヒカル:アディーン…
    あなたとも戦わないといけないの?

アディーン:私達はもう長く生き過ぎました。
       …生きる事に疲れてしまったのです。
       どうか、この呪縛から解き放ってください。


ヒカル:他に…方法は…

アディーン:私を倒さなければ砂時計を破壊することは出来ません。
       遠慮はいりません、私を倒すことは世界を救うことなのですから。


ヒカル:アディーン…
    (アディーンの光を失った目に強い決意が感じ取れた。)

    わかったわ…
    アディーン!あなたをその呪縛から解放します!

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■戦闘開始


ヒカル:(アディーンもまた命を懸けて向かってくる。
     その想いに答えようと、こちらも必死で応戦する。

     そして…長い戦いの最後の時が来る。
     力を合わせて放った渾身の一撃がアディーンの体に深々と突き刺さった。)

アディーン:おぉ…光を失ったこの瞳にも映る…あなたが世界を開放する者…

ヒカル:(アディーンの目に一瞬光が射したように見えた。)

アディーン:ありがとう…これで苦しみから、ようやく開放されます…
       どうか、ドゥヴァのことも…


ヒカル:アディーン!
    (崩れ落ちるアディーンに駆け寄る。
     アディーンはそのまま光の粒となって天へ昇っていった。)

    アディーン…

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■深海第7層


ヒカル:(先へ進むと火山と同じように砂時計があった。)

     青い…アディーンの砂時計…

     (アディーンの力を失った砂時計のガラスには大きなヒビが入っている。
      わたしは渾身の力をこめて砂時計を破壊した。)

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■黒の宮殿


ヒカル:(再びセレンの元へと戻る。)

セレン:アディーンの目には、あなたが光に見えたことでしょう。
    私の目にも、あなたの存在は強い光であるように見えます。


ヒカル:…。

セレン:…あなたのいない間にドゥヴァの身に何かが起こったようです。

ヒカル:!?

セレン:残念ながら今はドゥヴァのところへあなたを送り届けることができません。
    急いでドゥヴァのところへ向かってください。


ヒカル:はい!

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ヒカル:(迷路を進み、ドゥヴァのいる宮殿の最深部へと向かったわたしは見覚えのある場所へ出た。)

    ここは…
    お母さんがわたしを異世界へ送った場所…

    (そう、部屋の中央には魔導装置がある。)

リーユン:…私は神の代理人として来た。

ヒカル:!?
    (振り返るとそこには青い髪の…)

    リーユン?

リーユン:人の身でありながら世界のことわりを変えようとする大罪を裁いて来るように、
      アルゼ神より命ぜられたのだ。


ヒカル:……。

リーユン:まさか、かつて共に戦った君が大罪を犯そうとしているとは思いもよらなかったが、
      今から神の裁定が覆ることはない。
      君を倒して世界を守ること、それが勇者である私の使命なのだ。

      いくぞ!


ヒカル:(リーユンは腰の剣を引き抜き襲ってきた。)

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■戦闘開始


ヒカル:こんな戦いに何の意味があるの!?
    
    (リーユンの目には迷いがあるように思えた。
     でも、それ以上に使命をまっとうしようとする強い意志を感じる。)

リーユン:神の怒り、身をもって知るがよい!

ヒカル:(リーユンもまた姿が変わっていく…。

     白い大きな翼、白く長い耳。

     その姿はまるで天使のようだった。
     そう、禍々しい天使。)
     
    やっぱり…あなたもなのね……

    (リーユンは容赦なく攻撃して来る。
     そこへエデンとホルスが応戦している。)

    わたしには…やらなければいけない事がある…

    (自分に言い聞かせるように言うものの、弓を構える手が震える。
     リーユンを倒さなければ世界を解放する事は出来ない。
     でも、迷いが矢を放つ事をためらわせる。

     その間にも、エデンとホルスの猛攻が徐々にリーユンの体を傷つけていく。)

リーユン:闇は闇に帰るがよい!

ヒカル:(リーユンはホルスへ一気に間合いをつめ、剣を横に振った。
     ホルスは血しぶきを上げながら壁に飛ばされる。)

    ホルス!

    (エデンの一撃を食らって、よろめきながらリーユンはわたしを真っ直ぐに見ている。
     わたしはまだ矢をつがえたまま動けない。

     エデンが再びリーユンに攻撃をしかけると、
     今度はそれを剣で受け流し、そのまま振り下ろした。)

    エデン!

    (エデンはリーユンの足元で血まみれになって動かない。)
     
リーユン:ヒカル、私はずっと君をさがしていた。

ヒカル:(リーユンは徐々に元の姿に戻り、ゆっくりとわたしに近づいてくる。
     その足取りは弱々しく、体中に出来た真新しい傷口から血が滴り落ちている。
     きっとこのまま手を離せば簡単にリーユンを貫くだろう。)

リーユン:君が姿を消したあの日から…。

ヒカル:…。

リーユン:君がアルカディア帝国の人間で、セクメト皇女を逃がす手伝いをしたと
      わかったのは、ずっと後のことだ。


      
その裏切りで、多くの仲間を失ってしまった。
      なぜ祖国を裏切ってまで私たちに協力していた?


ヒカル:(リーユンはわたしの目の前で立ち止まり、剣を振り上げた。)

リーユン:そしてなぜ…我々を…私を裏切ったんだ?

ヒカル:リーユン…

リーユン:目を逸らすな!ヒカル!!
     私を…見るんだ!


ヒカル:(リーユンは剣を振り上げたまま、真っ直ぐにわたしの目を見ながら
     静かにその時を待っているようだった。)

    わたしは…
    わたしは、やらなくてはいけない事がある。
    世界を…解放する!
    
    (手を離すと、矢は一直線にリーユンの胸に突き刺さった。)

リーユン:ぐっ…

ヒカル:リーユン!
    (はっとに我に返り、崩れ落ちるリーユンに駆け寄る。)

リーユン:私を殺してから去れば、私は君を信じたまま死ねたのだ。
      神の奴隷となることもなく…私自身のままで。


ヒカル:リーユン!
    (血が止まらない。もう助からない…)

リーユン:だが私は、信じていてよかったのだな。

      
君が姿を消した理由も、今…わかった。
      ようやく世界は時間を取り戻す、と言うことか。


ヒカル:(弱々しくリーユンが手を伸ばす。その手をしっかりと握り締めた。)

リーユン:行くがいい、君はまだ未来でやるべきことがある。
      最後に…もう一度だけ、名前を呼ばせてくれ。


ヒカル:(泣きながら頷くわたしの手を握り返しながらリーユンは微笑んだ。)

リーユン:ヒカル……もし、未来だけでなく……過去も変わるのならば……
      もう一度………。


ヒカル:リーユン…
    (リーユンの力が抜け、握っていた手がこぼれ落ちた。
     わたしは震える手でそっとリーユンの頬を撫で、血を拭った。
     そして額に巻かれたバンダナをそっと外す。)

    リーユン、ごめんね。 …そして、ありがとう。
    わたしは、わたしのするべき事をするわ。

    (リーユンのバンダナを腕に巻き、立ち上がる。)

    リーユン、バルケス、アシャフ、サザンカ…
    みんな、最後まで見届けて!

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ヒカル:(ホルスもエデンも傷は深かったけど致命傷という程ではなかった。)

    エデン、ホルス…ごめんね。
    痛かったよね。
    ここでちょっと休んでいてね。
    
    (軽く手当てをしてから、一人で最後の竜…ドゥヴァの元へと向かう。

     もう迷いはない。)



ドゥヴァ:よく戻った…ノーリとアディーンを倒して来たのだな…。

ヒカル:はい。
    (ドゥヴァはわたしの迷いのない目を見て微笑んだ。)

ドゥヴァ:強く…本当に強くなったな。
     さあ、私を倒すのだ。


ヒカル:(ドゥヴァの目が鋭くなり、襲い掛かって来た。)

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■戦闘開始


ヒカル:(ドゥヴァの攻撃を掻い潜りながら矢を放つ。
     ドゥヴァも全ての力をぶつけて来る。

     長い…とても長い時が過ぎたように思えた。
     ドゥヴァの攻撃は激しく、体中に傷が出来ていく。

     体力は限界に達し、立っているのがやっとな程だった。
     絶対に負けられない…その想いだけで立っているような状態。

     そこに、ドゥヴァの一撃が来る。
     避けきれずにまともに食らって意識が遠のきそうになる。

     その時、黒い影が2つ後ろからドゥヴァに向かって突っ込んで行った。)    

    エデン!ホルス!

    (そんな力なんてもう残っていない筈なのに、エデンとホルスはドゥヴァに立ち向かっていく。)

    そうね…わたしは…一人じゃない!!!!

    (全神経を集中して矢に込め放つ。)

ドゥヴァ:ありがとう…これで皆…救われる…世界は再び…
     誰にもわからない未来へと……向かって行くだろう…


ヒカル:ドゥヴァ…
    (ドゥヴァは崩れ落ち、そのまま消えていった。)

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ヒカル:砂時計を…

    (よろよろと最後の砂時計の元へ歩く。
     ドゥヴァの力を失った砂時計のガラスには大きなヒビが入っている。
     わたしは渾身の力をこめて砂時計を破壊した。
     最後の砂時計が音を立てて崩れ落ちた。)

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ヒカル:(次の瞬間、地響きが起き宮殿ごと揺れはじめた。)

    な、なにが!?

    はっ…魔導装置が…!!

    (魔導装置からおびただしい魔力が放出されている。
     砂時計という抑止力を失って、異世界に繋がる穴が広がろうとしていた。)

    暴走してる!わたしが…止めないと!

    (魔導装置の前に立ち、広がり始めた歪みに両腕を突っ込っこんだ。)

    お願い止まって!!!

    くっ…!

    (魔導装置の魔力はすさまじかった。
     あまりの力に体が引き裂かれそうになる。)

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ヒカル:(意識が飛びかけた時、突然時間が止まった。)

???:開く者…そして我が血に連なる者よ。

ヒカル:リヴェリウス…!?

リヴェリウス:私を打ち倒すほどの力を持っていながら、
        この魔導装置を制御することは叶わぬか。
        お前に秘められた力がどれほどのものであっても、
        地上にある身では全てを発揮することはできぬ。

        不安定でしかない力………
        だがしかし、それゆえにこの世界の理を変えることができたのだ。


ヒカル:(リヴェリウスがゆっくりと近づいてくる。そしてわたしの肩に手を置いた。)

リヴェリウス:今は少しの助けが必要のようだな…
        残っている私の力の全てを、お前にやろう。
        私が助けてやれるのは、一度きりだ。
        いつかはお前がお前自身の力で、魔導装置を使うことが
        できるようになる必要があるだろう。


ヒカル:ぅ…くっ!
    (強大な魔力が体の中に流れ込んでくる。それと同時に時が動きだした。)

    リヴェリウス!!!

    (全ての魔力を使い果たしたリヴェリウスの体がみるみるうちに消えていく。)

リヴェリウス:……我はリヴェリウス……

        ……すべての存在に仇なす神、リヴェリウス……

        ………しかしながら………

        ………ときに不可思議な存在が現れるものよ………

        ………貴様のように………

        ………アルカディアのように………


ヒカル:ありがとう、リヴェリウス。あなたの力を無駄にはしないわ!

    (再び魔導装置に腕を突っ込み、集中する。
     部屋全体が眩しい光に包まれた。)

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ヒカル:…ぅ
    魔導装置は止まったみたいね…

    (全ての力を使い果たし、気を失っていたようだ。よろよろと立ち上がる。)

セクメト:砂時計を壊してくれてありがとう。
 
ヒカル:!?
    (振り返ると粉々になった3つの砂時計の前に小さな光りの玉が浮かんでいた。
     声はそこから聞こえてくる。)

セクメト:私は皇女セクメトであった者の魂…私の体はとうの昔に滅びているの。

ヒカル:セクメト?アシャフが逃がしたアルカディアの…

セクメト:今あなたに話し掛けているのは、私の記憶。
     いつか未来が訪れた時のために刻んでおいた、一粒の砂の記憶。

     せっかく時計を壊して世界を救ってくれたあなたに、
     こんなことを伝えるのは心苦しいの。
     でも私はあなたに未来を伝えたい。私たちが幾度となく繰り返した、滅びの未来を…。


ヒカル:滅びの…未来?

セクメト:母、いいえ、暗殺されたはずの女帝アルカディアは、滅んでなかった。
     アルカディア帝国の子孫の中でも、力の強い者の体を次々とのっとり、
     新たなトルファジアの女王として復活したの。


ヒカル:そんなことが…

セクメト:秘法を使い、永遠の生を得たアルカディア…
     けれど彼女の心は、自分を滅ぼした者たちへの憎しみと狂気で溢れていた。
     死んでも死んでも新しい肉体にのりうつり、殺しつづける。
     長い時が…繰り返す時間が…アルカディアの中の狂気を増幅してゆく。

     彼女は、どうして自分が他者にのり移っているのか、
     もはや忘れてしまっているのでしょう。
     やがて彼女は、巨大な力を持った子孫の体をのっとり、世界を滅ぼします。


ヒカル:世界を?

セクメト:そして世界は塵にかえってゆき、砂時計は砂の記憶をもとに、世界を作り出す。
     滅びたものと同じ、何一つ違わないものを…。


ヒカル:螺旋…世界…

セクメト:砂時計は、人の命を砂粒にかえていた。

     1粒増えれば、歴史を一度繰り返す。
     時計がなくなったことでようやく、砂が増えることはなくなったわ。
     繰り返す未来は、いつか終わる。
     この先は…滅びの未来しかないのかもしれない、
     今まで繰り返した歴史とかわらないのかもしれない。


ヒカル:…。

セクメト:だけどね…私、未来は変わると信じてる。
     あなたがここにいることが、歴史がかわろうとしている証であるもの。

     ヒカル…世界を開放する者…。

     私はヒカルの名を、砂に記憶しておくわ。
     ずっとずっと…私の存在が消えてしまっても、あなたの名を忘れないように…。

     ありがとう…それから…お帰りなさい。
     …大変な旅だったよね?
     ヒカルが……この…世界に帰ってきてくれて………とても嬉しかった。

     ………魔方陣を完全に制御できるようになれば、
     あなたを育ててくれた異世界に…帰ることも……できる……わ。

     …ありが…とう……お帰りなさ…い……

     …あ……り……がと………う………


ヒカル:(玉は光を失いそのまま消えていった…

     そしてそこに残った小さな砂時計の欠片。
     わたしは静かにそれを手に取った。)

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ヒカル:(数週間後…
     わたし達は傷の回復を待って、ファンブルグへと帰ってきた。
     そこは、何一つ変わらない姿でわたし達を迎えてくれた。

     宿屋のご主人は、「おかえりなさい」と言って、
     当たり前のようにわたしの為に部屋を用意しておいてくれた。

     弓屋のお姉さんは、新作の弓が出来たと満面の笑顔で迎えてくれる。

     大切な街、大切な人々…
     わたしにとってここは、もうひとつの故郷になっていた。



     リヴェリウスに与えられた力を使いこなせるようになれば
     セクメトが言ったように魔導装置を制御出来るようになるだろう。

     そうすれば異世界や過去にも行けるようになるかもしれない。

     まずは、わたしを育ててくれたお母さんにありがとうと伝えたい。
     たくさん心配させてごめんなさいと謝りたい。

     その後、わたしはきっとまたこの世界に戻ってくる。
     わたしにはまだこの世界でやらなければならない事がある。
     そう思うから…

     そして、4000年の時を越えて会いたい人達がいる。)   

    ねぇ、リーユン。わたしはこの世界を守れたかな?
    …またみんなに会いに行ってもいい?
    話したい事がたくさんあるの。

    (悲しい運命は変えられないのかもしれない。
     だけど、やらずに諦めてしまうよりも出来る限りの事をして足掻きたい。
     彼らもまた、とても大切な仲間だから…)



    ごめんごめん、エデン。
    さぁ、今日はどこにいこっか!

    あはは、大丈夫。
    お弁当もちゃんと持ってるってば。

    さ、ホルスも行こう!

    (今日もまた、わたしは掛け替えのない仲間と共に冒険に出かける。

     この先、どんな未来が待っているかはわからない。
     だけど、わたしは大丈夫。
     どんな困難にも立ち向かっていける。

     だって、一人じゃないから。

     …ファンブルグの空は今日もどこまでも青く澄み切っている。)




〜編集後記〜

ついに長いようで短かったXGプロジェクトも終了となります。
でも、日本版クロスゲートが終了した時と同じように、ヒカルはまだまだあの世界で冒険を続ける事でしょう。

クロスゲートは、わたしにとって初めてのネットゲームであり、色々な事を学ばせてくれた大事なゲームです。
辛いことも悲しいことも・・・もちろん楽しいことも・・・
すべてが良い想い出であり、わたしの糧となっています。


ふと耳を澄ませば、今でもあの世界でわたしの分身たちが元気に飛び回っている笑い声が聞こえてくるようです。

最後になりましたが、
再びクロスゲートの世界で旅をする機会をくださった参加者の皆さん、聞いてくださった皆さん、そしてクロスゲートに感謝感謝です。























see you again!(*^-')/~☆Bye-Bye♪